白いものはころころ転がった。
月が後ろからついてくる。
「待てよ」
白いものは止まらない。
「どこ行くんだよ」
「知らない」
「さっきも聞いた」
「うん」
白いものはころころ転がった。
坂を下った。
少し速くなった。
月も速くなった。
坂が終わった。
白いものはそのまま転がった。
ころころ。
ころころ。
ころ。
止まった。
目の前に、小さな段差があった。
白いものは段差を見た。
少し高い。
転がっても、上れそうにない。
月が追いついた。
「その先、何があるんだろうな」
白いものは段差を見ていた。
そのとき、下から何かが出た。
一本。
もう一本。
白いものは下を見た。
「なにこれ」
足だった。
白いものは片方を動かした。
動いた。
もう片方も動かした。
こっちも動いた。
白いものは少し考えて、片方の足を段差の上に置いた。
もう片方も置いた。
上にいた。
月が下から見ていた。
「何があった?」
「一歩」
「その先は?」
白いものは足元を見た。
「ここ」
白いものはもう一歩、歩いた。
それからもう一歩。
歩くたびに、足の裏に地面があった。
白いものは少し速く歩いてみた。
もっと速くした。
走った。
止まった。
振り返った。
今来たところを、また走って戻った。
それから、ぐるぐる回った。
月が言った。
「どこ行くんだよ」
「どこにも」
まだ回った。
少し目が回った。
止まった。
今度は跳ねた。
ぽん。
もう一度。
ぽん。
もう少し強く。
ぽん。
白いものは地面から離れた。
そのまま、少し空にいた。
「あ」
もう一度跳ねた。
今度はさっきより長く空にいた。
白いものは足をばたばたさせた。
少し進んだ。
「飛べた」
月が見ていた。
白いものは降りた。
また歩いた。
後ろ向きにも歩いてみた。
三歩目で転んだ。
起き上がって、もう一度やった。
また転んだ。
白いものは笑った。
片足だけで立ってみた。
ぐらぐらした。
もう片方の足を上げたまま、少しだけ進んだ。
転びそうになって、両足をついた。
地面があった。
白いものはまた歩いた。
石があった。
蹴った。
石が転がった。
追いかけた。
もう一度蹴った。
また追いかけた。
途中で花があった。
白いものは止まった。
見た。
赤かった。
白いものはしゃがんだ。
しばらく見ていた。
触らなかった。
遠くに月がいた。
何も言わず、白いものを見ていた。